2011年5月21日土曜日

中国経済の暴走は止まらない 権力闘争、本番に突入 

 ◆党大会に景気連動

 不動産バブルとインフレが止まらない中国経済の「軟着陸」は、かなり難しそうだ。2012年の共産党全国代表大会に向け、北京では権力闘争が本番に突入し、各地の党幹部が既得権益拡大に目の色を変えている。党内の影響力が弱い温家宝首相ら「改革派」の手では経済の過熱にブレーキをかけられなくなる。

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 中国の景気は「党大会循環」ともいえるような波を描く。グラフは名目国内総生産(GDP)の伸び率の推移である。

 印を付けた共産党大会は1977年以来、5年に1度開かれ、地方から中央に至る党幹部人事を決める。多くのケースで党大会を挟んで経済成長が加速している。例外は、アジア通貨危機の波が押し寄せた97年と、1年後に「リーマン?ショック」の大津波が襲来した2007年以降である。

 経済開発の権限を持つ各地の党幹部?官僚は自身および身内の利権拡大のために農民から土地を収用し、工場団地を整備する。不動産開発にも積極的だ。

 開発投資が多ければ所管の地方の成長率が跳ね上がり、所得や雇用も増える。高い業績を挙げれば党中央に評価され、出世競争で有利に働く。このため、党大会の前年あたりから開発ラッシュが加速する。党大会後、各地に配属された党幹部は「書記」を筆頭に張り切って開発、つまり権益実現に邁進(まいしん)するわけだ。

 ◆形成される利権集団

 78年末に始まった「改革開放路線」後、アジア通貨危機不況時を除いて中国の名目成長率は8%の水準を上回っている。党関係者の間では「保八」と呼ばれ、8%成長は必達目標である。党官僚には、公的支出の8%分を自身や仲間の取り分とする暗黙のルールがある。利得分を増やすには開発規模を拡大すればよい。

 開発に欠かせない資金融通も基本的に党幹部?党官僚の裁量で決まる。党中央は財政を各地に配分する。中央銀行である中国人民銀行、融資シェアの大半を占める国有商業銀行、そして開発を請け負う国有企業も党官僚が支配している。

 従って、党内実力者は独自の利権集団、いわば派閥を形成していく。江沢民前総書記?国家主席に代表される「上海閥」がその代表例だ。

 胡錦濤総書記も2007年の党大会を機に広東省、四川省、北京市などに側近を配置した。温家宝首相は胡総書記の意をくんで天津市に隣接した沿海部唐山市曹妃甸(とうひでん)地区の工業開発に熱心である。

 異形の政治システムのため、中国経済は過熱しやすい。グラフからもうかがえるように党大会の1、2年後に成長率はピークに達する。インフレ率が上昇し、党中央は急遽(きゅうきょ)引き締めにとりかかる。こうして経済成長は減速するが、党大会前年に再び党幹部はアクセルを踏み出す。

 12年の「党大会景気循環」はどうなるか。胡錦濤指導部はリーマン?ショック後、4兆元(約49兆円)の財政追加支出に踏み切ったほか、09年1月から国有商業銀行に対し、融資額を一挙にそれまでの3倍に増やさせた。この結果、北京、上海を中心に不動産価格が急上昇し、開発投資が膨らんでいる。

 平年でも中国の不動産関連などの固定資産投資のGDP比率は45%程度で、過去数年間の日本の2倍以上になる。今年1?9月には、固定資産投資比率は72%に達した。成長率はかさ上げされたが、不動産市場の過熱に加え、消費者物価上昇率も警戒ラインである3%を9月まで3カ月連続で超えている。

 ◆新「リスク」に備えよ

 不動産市場は、既得権益層の“利殖の場”である。2件目、3件目の豪華マンションを買う層と、差別にあえぐ大都市部への出稼ぎ農民など低所得者との貧富格差は広がるばかりだ。インフレはこうした中低所得層を直撃し、一般市民、就職機会のない学生や出稼ぎ農民の不満を高じさせる。

 危機感を持った温家宝首相は政治の民主化を繰り返し公言すると同時に、不動産融資の規制を打ち出し、中国人民銀行は利上げに踏み切った。ところが、次の党大会が来る。各地の党幹部は経済引き締めどころではない。

 今月18日に閉幕した共産党中央委員会総会の結果、党政治局常務委員?国家副主席、習近平氏の次期党総書記?国家主席への昇格が確実となった。習氏は党内の太子党(党高級幹部の子弟)グループの代表格である。既得権益を奪いかねない民主化の抵抗勢力を支持基盤に、党内の権力闘争では改革派に対して優位に立った。政治情勢からみて、中国経済の「暴走」は12年にかけて止められそうにない。新たな「チャイナ?リスク」に備えなければならない。(編集委員?田村秀男)


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引用元:RMT

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